藤井風さんの初武道館ライブ『Fujii Kaze "NAN-NAN SHOW 2020 " HELP EVER HURT NEVER@日本武道館』を生配信で観た
タイトルの通り、2020年10月29日(木)、藤井風さんの初武道館ライブ 『Fujii Kaze "NAN-NAN SHOW 2020 " HELP EVER HURT NEVER@日本武道館』を生配信で観ました。
残念ながら来場チケットは落選してしまいましたが、生配信のおかげで至近距離で初武道館ライブを堪能することができました。生配信ありがとう。
今回、会場では感染症予防対策としてマスク着用はもちろんのこと、間に換気時間を設けた2部制、私語歓声厳禁、そのためにチケット申し込みも1人1枚のみ、客席はソーシャルディスタンス確保のために市松模様に配置、グッズの会場販売は無しなど、万全の対策のもとに行われました。
キャパシティの激減が避けられない中、収益を大きく左右するグッズすらネット販売のみで会場販売を無しにするというのは、やはり接触を限りなく少なくするためにとても重要だなぁと感服するとともに、収益がとても心配になりました。ということで、微力ながらネットでグッズも購入(単純に欲しかっただけ)。
エンターテインメントに溢れた最高のライブでした。
開演30分前にはラジオ番組が流れ、そのラジオDJは風さんがこれまでに何度も出演してきたFM802の飯室大吾さん。
「私語厳禁のため、待ってる間に退屈しないように」との思いからのラジオ番組だったようで、優しさが過ぎる。
風さんのこれまでを振り返る内容で、子供時代についてのエピソードも教えてくれました。
Q.子供の頃やっていた遊びは? A.おままごと
Q.子供の頃の宝物は? A.スヌーピーのぬいぐるみ(お兄ちゃんの影響で好きになった)
Q.お母さんの好きな料理は? A.おにぎり、トースト、サラダ
Q.藤井家の決まりごとやルールは? A.プラスチックの容器は分別する、ヨーグルトの蓋についている部分も無駄にしない
Q.3歳でピアノを始めた風さんの1日のスケジュールは? A.平日は保育園や幼稚園から帰ってきてからお風呂までずっとピアノ、ご飯を食べてからもピアノ。休日はずっとピアノ、時々英語のお勉強や運動。食事中や移動中も音楽をかけてもらっていた。
そのほか、上京後のエピソードやこれからのビジョンについても。
Q.東京で好きな場所は? A.ドンキホーテ(何でも揃っているし、色んな人がいるから)初めて自分の曲を外で聞いたのもドンキとのこと
Q.(質問部分を失念)ひとり暮らしで学んだこと的な? A.部屋がすぐ散らかる、食べ物にカビがはえる
Q.寂しくなるのはどんな時? A.孤独も楽しめるように心がけている
Q.かっこいい大人は? A.お父さん、マネージャーのずっずくん(ずっずくんが1番の癒しの存在)
Q.1番大事にしていることは? A.聴いてくれる人にポジティブな影響を与えられる存在になる
Q.挑戦したい曲 A.ゴリゴリにイキった曲、みんなが歌ってくれる曲。次のアルバムは若々しい楽しいアルバムにしたい。
あと、メモることに気を取られて質問全然聞いてなかったけど「中学時代は奇声を発して怒られていた、高校時代は体育祭の応援団長だった」っていう回答だけ聞こえたところがありました(笑)
アバウトだけどこういう感じでたくさんエピソードが聞けて、開演前にドキドキしながらも楽しい時間が過ごせました。
本番直前の風さんがラジオブースに現れてメッセージを残していくサプライズも。
そしてこのラジオ、ライブ当日に突如リリースされた風さんの公式アプリでも後日聴けるようになるらしく、本当にホスピタリティが凄い。
ラジオ後に映し出された会場はセンターステージ。白いステージに黒で描かれた「HELP EVER HURT NEVER」の文字。そしてその中央には開演までの残り時間のカウントダウンを表す黒い箱が。このカウントダウンが0:00になった瞬間、「帰ろう」のMVティザーでも流れていた「帰ろう」のストリングスが流れ出す。箱が上がっていくと、箱の中には1台のグランドピアノと風さんの姿が。そして「帰ろう」のストリングスに合わせてピアノを弾く風さん。この時点で既に泣いてしまいそう。
1.アダルトちびまる子さん(おどるポンポコリン)
1曲目からギャップで楽しくなっちゃう。
アダルトちびまる子さんは風さんが沢山の人に知られるきっかけにもなった大切な曲なんですよね。私はそれをリアルタイムでは知らないけれども、初武道館ライブの1曲目にこの曲を持ってくることの意味を強く感じてじんわりしました。
2.Close To You
「HELP EVER HURT COVER」と同じくイントロなしのウィスパー「Why do birds」入りだったので例によって例の如く息が止まるかと思いました。聖母のように優しい曲。
ライブ全編通して風さんの息遣いまでもがよく聴こえてきたんだけど、風さんは鼻でブレスしながら歌うんですね。すごく難しそうな歌い方をするんだなぁと思いながら観ていました。あの歌い方はどうやら風さんの癖のようです。
MCでは「このステージ回るんですよ」とステージを回転してくれました。「回りよる、回りよる。すげかろう。」と自慢してくれる風さんと、ステージが回転した時にぼそっと「ありがとうございます」ってステージを回転させてくれたスタッフさんにお礼を言っていた風さんに愛おしさが溢れました。
「センターステージだから、ずっと後頭部だけとかずっと顔だけっていうことがないように回しながらやっていきます」みたいなことを言っていて優しさ100%でした。
3.Just the two of us
「クリスマスっぽい曲を。まぁ全然クリスマスの曲じゃなくてわしがそう感じてるだけなんですけど。」みたいな言葉からこの曲。
YouTubeでも光るクリスマスツリーを飾って、赤チェックのシャツと緑ジャージというクリスマスカラーでカバーしてるもんね。
4.丸の内サディスティック
丸の内サディスティックのイントロをバッチバチに弾いたと思えば、突如その手を止め、ピアノを離れる風さん。
そして丁寧に東西南北各方面へマイク無しの地声での煽り。確かにこの曲は盛り上がりたい。
ピアノに戻ったかと思えばいきなりの「報酬は入社後〜」入りですよ。くぅぅ〜〜〜出ました!!!YouTubeでの生配信ライブのデジャブじゃないか!!やはり分かってやってらっしゃる。参りました。
5.特にない
ここからは「HELP EVER HURT NEVER」の曲たちです。
「皆さんも演奏に参加してください」と指パッチンのレクチャー。指パッチンのタイミングを教えてくれるとともに「わしゃいっこも鳴らんのんじゃけれども」と指パッチンができない可愛さを覗かせる。「鳴らない人は小さくクラップでもいいですよ」と自分とマイクの間でその瞬間だけちょっと仰け反りながら小さくクラップしてお手本を見せてくれる様子がとても可愛かったです。
そして「不満や満たされないこと目を向けるのではなく、満たされていることに目を向けて、満たされた気持ちで帰ってください。」という風さんらしい素敵なメッセージ。ぼそっと「まだ帰らんのんじゃけれども」なんて付け足すもんだから思わずクスッとしてしまった。
「特にない」の弾き語りもすごく良かったなぁ。また聴きたい。
6.風よ
「わしの曲はいつも大体祈っとる。祈りがなければこげな大きな舞台、怖くて立てん。その中でも次やる曲は特に祈っとる曲。」と演奏したのがこの曲。
確かにお喋りしている時は緊張している様子が伝わってきたけれども、パフォーマンスし始めたらキリッとモードが変わって緊張すら味方につけている感じがする。
今回演出にも携わっている山田健人監督がラジオで「近年稀に見る憑依型」と評していたけれども、やはり演奏が始まると目が変わるよね。
「風よ」も本当に大好きな曲なので弾き語りという贅沢なアレンジで聴けて幸せでした。はぁ、もう一度聴きたい…
ここまでが第1部。風さんはステージを降りて、お手振りしながら客席からの退場。
15分間の換気休憩を挟みます。
7.何なんw
ここから第2部の始まり。
第1部は背中に桜の写真が印刷された白Tシャツ、ジーパン、茶色スニーカー(?)というシンプルな出で立ちで弾き語りによって"聴かせる"パートであることを、第2部ではストライプのゆったりしたセットアップ、茶色ブーツ(?)という風さんだからこそ着こなせる出で立ちでバンドスタイルや映像によって"魅せる"パートであることを視覚情報でも表現しているかのようだった。
第1部は白ステージ、第2部は黒ステージという対比も含めて2部制であることを逆手にとった上手い構成で流石でした。
風さんは客席からの登場。うずうずしてる客席に向かって「立ってもええんやで!」って呼びかける風さんが良かった。
サビで「何なん」が来る度に発声禁止の客席にマイクを向ける風さんも可愛かった。せっかくマイクを向けられてるのに「何なん!」と心のままに叫べなかった観客の皆さんはもどかしかったのでは。
MVでよろよろと歩きながら倒れ込むパートで、MVと同様によろよろと歩きながら倒れ込む風さん。倒れ込んだ反対側の席の方々が背伸びするようにステージを覗き込んでいる様子を見て、「わかる〜〜〜センターステージの向こう側でしゃがまれると全然見えなくなるんだよね〜〜〜」と古の思い出が蘇ってきました(笑)
アウトロでは次の曲で使うキーボードにマイクをセットして、手ぶらのままグランドピアノに戻りながらピアノブースに飛び乗ってそのまま豪快にピアノを弾く風さんに大興奮した上に、何度もYouTubeで観てきた渋谷公会堂でのアウトロアレンジとも違うアレンジを聴けて更に大興奮でした。
8.もうええわ
いつも弾き語りの時だけ「怯えないで」の「ないで」で語感に合わせてキーボードを弾くのが大好きなんですけど、やはりライブでは音源と同じ弾き方をするんだなぁと思った。結局はどちらも好き。
そしてアウトロの早弾きアレンジが聴けて耳が幸せ。
どのタイミングだったかな?このタイミングだったかな?
「元気にしてますか〜?」って呼びかけつつ、「ちゃんと奥まで見えてます〜。今日はコンタクト入れてきたんでちゃんと見えてます。」って本当に見えていることを説明してくれる風さんが可愛かったです。ライブによっては「コンタクト入れとらんから何も見えん」って言う時もあるからね。「今日はちゃんと見えとるよ!」って教えてくれたんですね。
9.優しさ
歌う前に「優しさ」を作るきっかけとなったエピソードを話してくれました。
自分は人に優しく出来ていないのに人に優しくしてもらった時、自分が恥ずかしくなった。優しさは弱さなんかじゃなく、強さなんだと。
「優しさ」を歌う風さんってなんだか神々しさすら感じます。その一方で、高音を出す時に鼻の付け根あたりが力むところに色気を感じてしまった…
10.キリがないから
この曲はデジタルとの融合にワクワクしました。MVにも出てくるフクロウがいきなり画面上に現れて飛んで行ったからびっくり。あれは生配信の人にしか見れない演出だったようですね。プレゼントをありがとうございます。
曲中、箱型のモニターが降りてきてグランドピアノがあった場所が巨大モニターに様変わり。と思えば、再び箱が上がるとその中にはなんとこれまたMVにも出てくるアンドロイドのヒロムさんの姿が。あれはかなりテンション上がる。そして2人の息ぴったりなダンスを見ることができました。風さんってダンスまでできちゃうんだなぁ。つくづく"魅せる"才能に溢れた人だと思いました。
11.罪の香り
色気が凄いですね…
なんか、1番では片手でマイクを押さえながらもう片方の手はポケットに手を突っ込んでいて、2番では両手ともポケットに手を突っ込んでいたような気がするんですけど…しかもちょっとヘドバンもしていたような。
スタンドマイクスタイル最高じゃん…あとポケットのあるセットアップよ、ありがとう。
12.調子のっちゃって
「調子のっちゃって」ポーズがかっこよく進化していた。あのポーズにそんなアレンジまでできるのか…
リリパではサビで自らアソコを指さしておきながらハニカミ笑いをしていたけれども、この日はさり気なく、しかし堂々とアソコに手を持って行っていた。いやだから、色気よ…
「瀬戸際の見栄が この首を絞める」で自分の首を絞める仕草をする風さん。
ラストのウィスパー「調子のっちゃって」も聴けて大満足です。
13.死ぬのがいいわ
グランドピアノで一音ずつ奏でる度にモニターの火花が呼応する。音数が増えると共に激しさを増す火花。そして始まるこの曲のイントロ。やはりこのイントロのピアノは素晴らしいし、映像も演歌のようなこの曲の世界観とすごくマッチしていた。
曲終わり、またもや箱が降りてきてその中に消えていく風さん。
箱型モニターには何やら波の映像と「主演 藤井風」の文字が。火サスとか昔の映画のパロディ的な映像が始まるのかと本気で思っちゃった。風さんって昔ながらの男前のパロディとか出来そうだもんな…
頭がプチ混乱している間に再び箱が上昇し、白地に赤字で「Botter love」と書いてあるシャツと黒パンツに衣装替えした風さんの姿。「風さん、もしかして人生初の早替えなのでは!?」という謎の感動を覚えていたらモニターには見覚えのない「へでもねーよ」の文字が。
14.へでもねーよ(新曲)
「へ…でも…ねーよ…?」とちゃんと文字を読めていたかも覚えてないけれども、待望の新曲初披露です。
イントロがめちゃくちゃ演歌っぽくて、あの波の映像が流れた意味がよく分かった。
「開演前のラジオで言ってた"'ゴリゴリにイキった曲"ってこれのことだったのか!!」と伏線を回収しつつ、第一印象は「新境地の尖ったかっこいい曲」でした。ちなみにサビは半分くらいなんて言ってるのか分かりませんでした(ごめんなさい)。イカした曲だということだけは分かりました。
だけど、配信後に歌詞を見ながらこの曲を聴くと第一印象は覆されました。攻撃的な曲かと思っていたけど、やはり根底に流れているのは祈り。外側と内側のギャップが凄い。
「願うはここへずっと居たい」
「神様、力をちょうだい
あんたがいれば無問題」
「変わらぬものにしがみついてたい」
「信じたい」
「神様、力をちょうだい
一人じゃ何も出来ない」
「確かなものにしがみついてたい」
この曲もまた祈りの曲ならば、サビの言葉の並びは他人への攻撃ではなく、無意味なものに惑わされないようにと自分に言い聞かせているみたい。
「かと思いきや正反対
とても平穏な新世界」
「かと思いきや急展開
自分次第で別世界
作り変えられるみたい」
生きづらい世界でも自分次第で生きやすく変えていくことができるんだという救いを願ってる。
怒りのようなものが表出しているパートではエレキギターがかき鳴らされていて、祈りのパートではピアノとストリングスが鳴っているという顕著な対比も好き。
「うちへ帰れ」
「しばし黙れ」
「よそで騒げ」
も、ずっと風さんの曲を聴いてきた人間が聴くと自分自身の中にあるネガティブな感情や煩悩に対して言っているように思えてきます。
「喜怒哀楽の"怒"が全くない」と言っていた風さんがこういうテイストの曲を作ったというのもまた面白いなぁと思ったり。
あと単純に、「キック」の「ク」、「パンチ」の「チ」、「ブロウ」の「ウ」、「ディス」の「ス」、「ヘイト」の「ト」、「マウント」の「ト」の息遣いの色気に耳がびっくりしてしまう。刺激強め。
ここで「この次もう1曲新曲やります。新曲2曲あります。この後24時から配信スタートします。」と怒涛の供給。
15.青春病(新曲)
第一印象は爽やか。とにかくポップで爽やか。教室の効果音にいきなり青春が詰まってる。王道のサウンド大好き。
「開演前のラジオで言ってた"'みんなが歌ってくれる曲"ってこれのことだったのか!!」とここでも伏線を回収。
これまで一人称と二人称が「わし/あんた」「私/あなた」だった風さんが初めて「僕/君」を使った歴史的瞬間でもあります。
だけど爽やかなだけじゃない風エッセンスがふんだんに盛り込まれてます。私の大好きな風さんの対比表現も堪能できます。
聴けば聴くほど深みにハマって好きになる曲。
ところであの歌詞は風さんの手書きでしょうか?好きです(突然の告白)。
ここでもまたなのですが、「ヤメた \ハッ/」と「ムリだ \ハッ/」の吐息で急に色気ぶっ込んでくるじゃん…爽やかさとの高低差が凄い…
「青春はどどめ色」にお恥ずかしながら「どどめ色…?」となったのですが、どどめ色って正確な定義がない色なんですね。キラーワードに正確な定義のない色を持ってくるあたり、すごく好き…青春も簡単に定義できるものじゃないもんね。青春は必ずしもキラキラ輝いてるものじゃないということが伝わってくる。メロディーはすごくポップで爽やかなのに歌詞はずっと悩んで苦しんでもがいているね。傍から見ている大人は簡単に「青春だね〜」なんて羨むけれども、その渦中にいる間は楽しさだけじゃなくて、苦しみとか息苦しさとか色んな葛藤を抱えているんだよなぁ。
ただ、自分の強さと弱さの狭間で揺れたり、ちょっと進んでまたちょっと下がったりするのは大人になっても変わらないので、もしかしたら人って幾つになっても「青春病」なのかもしれないなぁとも思ったり。私だって幾つになっても儚さを追い求めてるもんな…
「無常の水面が波立てば
ため息混じりの朝焼けが
いつかは消えゆく身であれば
こだわらせるな罰当たりが」
とか
「切れど切れど纏わりつく泥の渦に生きてる
この体は先も見えぬ熱を持て余してる
野ざらしにされた場所でただ漂う獣に
心奪われたことなど一度たりと無いのに」
とか文学過ぎるでしょ。はぁ…(語彙消失)
サウンドもまるで渦の中で溺れてるかのよう。
冒頭の
「青春の病に侵され
儚いものばかり求めて
いつの日か粉になって散るだけ」
は、青春の刹那性を理解しながらそれを追い求めてることを歌ってるのかと思ったんだけど、
ラストの
「青春のきらめきの中に
永遠の光を見ないで
いつの日か粉になって知るだけ
青春の儚さを…」
は、青春の刹那性への不理解に、それが永遠には続かないことを諭してるように聴こえるから、私にはまだ理解力が足りない…それとも、理解と不理解が共存しちゃうような定まらないつぎはぎな感じが正に「青春病」なんだろうか?
思えばこの曲の歌詞はやけに右往左往して悩み苦しんでいる気がする。未熟と成熟を行ったり来たり。最初は悩める若さを爽やかに歌っているのかと思ったけど、もしかしたら本当は「"青春"なんていう言葉で飾られた葛藤の時期から早く脱出したい」と願う、こちらもある種の祈りの曲なのかもしれない。それならば、「青春にサヨナラを」という一見爽やかでキャッチーな歌詞は「葛藤から抜け出したい、解放されたい」という心の叫び。
そして、これは「青春」を学生時代のような限られた期間を意味する言葉と取るか、もっと広義の言葉と取るかで聴こえ方もかなり変わってくるし、「いつの日か粉になって散るだけ/いつの日か粉になって知るだけ」の「粉」の意味とかも変わってきそうですね…
この曲をちゃんと理解するにはまだ時間がかかりそうです。精進します…(笑)
16.さよならべいべ
いやぁ、この曲順、素晴らしいですよね。
正直、「死ぬのがいいわ」が終わった時、「この後さよならべいべ?曲の感じ結構ガラッと変わるけどそのまま行くのかな?」なんて思ってたらここで新曲ですよ。
歌詞の中に演歌のような世界観を持つ「死ぬのがいいわ」の後に、メロディーに演歌の要素を漂わせる「へでもねーよ」を持ってきて、その次にもうひとつの新曲としてガラッと雰囲気を変える「青春病」。ガラッと雰囲気を変える役割は既に「青春病」が果たしているので、そのままスムーズに「さよならべいべ」に入れる。
「ですよね!!新曲入れるならそこしかないですよね!!!」って感じ。完璧じゃないですか…いや、そりゃご本人が一番分かってるでしょって感じではあるんですが、やっぱり公式と解釈が一致すると自然と嬉しくなっちゃうよね。
「さよならべいべ」が始まるところでひとつこの感動があって、更に「さよならべいべ」を聴きながらもうひとつの感動があった。それは、これまで上京ソングとして聴いてきたこの曲がライブ終盤のお別れソングとしてぴったりな曲であったということ。
数え切れないほど聴いてきたはずのこの曲がここに来て全く違う意味に聴こえてくることに驚き感動すると共に、これだからライブって面白いし、曲って面白いなぁと嬉しくなりました。
「さよならがあんたに捧ぐ愛の言葉
わしかてずっと一緒におりたかったわ
別れはみんないつか通る道じゃんか
だから涙は見せずに さよならべいべ」
とかめちゃくちゃライブ終盤にぴったりじゃないですか。
「さよならべいべ」ってアルバムで聴くと大切な「あんた」から離れて新しい場所(東京)に行って新しい人々(私たち)に出会う覚悟を歌っているから、この解釈に存在する"私たち"は完全なる他者というか外側の人間なんですよね。
だけどこれをライブで聴くと私たちが大切な「あんた」の立ち位置にいる訳です…ライブが終わって私たちと離れる寂しさと新しいステージに進んでいく覚悟を歌っているように聴こえる。「べいべ」って岡山のことじゃなくて私たちのことだったの…?なんて思えてしまう。
藤井風さん天才か…?あ、天才だったわ。
手を振って盛り上がれるのも楽しい。
「さよならべいべ」終わりで最後のMC。band memberとAndroid役のヒロムさんのご紹介、そしてライブに携わった全てのスタッフさんへの拍手を。
そして最後に、「なんとか今日まで生きてきて、大変な状況の中、このライブを見に来てくれたあなた、一人ひとりのあなたに拍手を」(だいぶ曖昧な記憶ですがこのようなことを仰っていたはず)と。「皆さん」じゃなくて「あなた」と一人ひとりに語りかけるように言う風さんが素敵でした。
17.帰ろう
ライブのラストにこれ以上相応しい曲はありません。今日の帰路の曲でもあり、この先の人生の道標でもある曲。
「わしはずっともがいてます。もがきながら生きていきましょう。」と伝えてくれました。
ちょっとこの曲は胸がいっぱいで特に記憶が飛んでるかもしれない…
「帰ろう」のMVで赤い風船が飛ぶところで武道館では白い羽根がたくさん飛んだのがすごく良かったなぁ。白い羽根がたくさん過ぎてステージ上も羽根だらけになって、風さんが羽根に包まれてました。良い景色。
風さんの頭にも3,4枚くらい付いたまま最後にご丁寧なお辞儀。そのまま箱が降りて消えていったからやっぱり風さんは天使なんだと思う。解釈の一致ですね。ありがとうございます。
ライブのオープニングが「帰ろう」のストリングスだったからこのまま時間がループしてまた「アダルトちびまる子さん」が始まって、永遠にこの世界の中にいられたらどれだけ幸せだろうかと思ったけど、始まりがあれば終わりがある。時間は有限だからこそ尊いものなんですよね…
幸せな時間をありがとうございます。
最後に
混沌とした2020年にメジャーデビューを果たした藤井風さん。既に観客を入れているところ、まだ入れられないところ、それぞれに様々な状況がありますが、対策を講じながら観客有りの生配信で武道館ライブを行ったことはエンタメ界の光になったと思います。
私も画面越しではありましたが、初めて風さんのライブを観ることができてとても幸せで満たされた気持ちになりました。
「生でも、画面越しでも、心の距離は一緒です!」と言ってくれた風さんの言葉は紛れもなく本当でした。
独自の「藤井風」という世界を持った風さん。当然ながら私は風さんの全てを知っている訳ではないけれども、知りうる限りの風さんの生き方や作品を見てきて強く感じたのは、風さんは価値基準が自分の外側ではなく、自分の内側にある人だということ。相対的ではなく、絶対的な価値判断が出来る人だということ。
武道館ライブを観て、この先の風さんの活躍が更に楽しみになりました。もっと高く、もっと遠く羽ばたいてくれると強く信じています。
しかし、人類はいつになったら自分が見たものを脳内に録画できるようになるんでしょうかね?いつまでも覚えておきたいライブなのに、もう既に記憶が曖昧です。多分所々記憶も捏造しちゃってる…
ということで、武道館ライブの円盤化を正座してお待ちしております。何卒、よろしくお願い致します。