報ステ藤井風特集 書き起こし

報ステ特集】藤井風さんコロナ禍で共感…死生観(2020年9月22日)

ナレ:ナレーション(沢城みゆきさん)

風:藤井風さん

 

ナレ:藤井風さん、23歳。

風:お願いします。

ナレ:5月、ファーストアルバムが1位を取りました。ですが、まだ音楽番組や音楽雑誌で彼の思いを聞いた人はいません。語るのは、YouTubeの中です。世界へ、自分で伝えることにこだわっています。

 風さんの原点は、去年まで暮らしていた岡山県の小さな町、里庄町にありました。喫茶店を営む音楽好きの一家に生まれ、小学校が終わる頃からYouTubeにピアノ動画の投稿を始めます。高校卒業後も続けた活動、小道具も全て自分で考えました。

風:岡山はもうほんま20年以上、もう岡山から一歩も出んぐれぇの覚悟で育って、親が別に東京やこ出んでええって言うから出んかったし、で、わしもそんななんかインターネットもあったし、どっか行ったからなんかができるとかそういう考えはあんまりなかったかもしれないですね。

ナレ:インターネットの中、その才能はあらゆる地域の人に発見されていきました。デビューしても、このままどこまで行けるか実験中なんだそうです。

風:もともと確かにYouTubeで動画をつくることしかしとらんかったんで、わし個人的にはそんな変わらず活動させてもらえたかなぁっていう感じが強いかもしれないです。

ナレ:緊急事態宣言の頃、様々な批判や不満が牙を剥きました。

 そんな中、「コロナ禍で、恐怖に皆がジッと耐える毎日、神さま、素晴らしい音楽のギフトをありがとう。」

 在宅勤務などでネット時間が増えた人々の目に留まります。

風:「みんなな、今大変なことも多いじゃろうけど、落ち着いていたら絶対わしら大丈夫やけん。な?いつも冷静にね、優しく。」(Piano Live Streaming ピアノ弾き語りライブ配信Day2の映像より)

ナレ:そして、異例の現象も。アルバムの最後の曲に心を動かされた人々のコメントが次々と寄せられています。

風:「ああ〜……帰ろう〜」っていうのが降ってきて、死生観というか、老人ホームだとか病院とか終活セミナーやこうにもなんか行っとったりして、演奏とかしよった時期もあったんやけど、死ぬときのことを考えるっていうのは全然そんなネガティブな話とか怖い話とかじゃなくて、死ぬっていうか、もう帰るようなときのことを考えるってことが、じゃあ今どうやって生きていけばええんかなっていうことを考えるきっかけになるし、もしかしたらより良い今をみんな生きているんじゃないんかなって思うんで、誰かがちょっといい気分で人生を送れたりするために、音楽やっとるようなもんなんで、もうそれがわしにとってすべてっていうか、もうそれだけで、あの、生きていけます、わしは。

 (ファーストアルバムのタイトル)HELP EVER HURT NEVERは「常に助け決して傷つけない」っていう意味なんすけど、あの、うちの親父、おとんが大切にしとるいうか、わしによう聞かしとってくれた言葉でもあって、なんかもうすべてのことがそこにきゅきゅきゅーっと集約されとるような言葉じゃと思うたんで、わしも。うん。それを聞いたスタッフさんたちも「すごいええやん」いうて、言うてくれて、えー、わしは逆に「ええんですか?長くないですか?このタイトル。」とか言ようたんすけど、「いや、これで行こう」言うて、逆にわしも背中を押してもらいながら。そう、当たり前じゃと思っとったけど、なんかそんな人に言うたことなかったし、そんな考え方とか。そんな真面目な話せんので、わしも。でもなんかそういうところをこんな理解してくれる人たちに、わし東京で囲まれとるって思って。それはすごい嬉しかったし、ありがたいですよね。なんか、なんて言うんやろ、どこにおってもしっくり、ありがたいことにどこにおってもなんかしっくりこさせてもろうとんで。

ナレ:風さんはコロナ禍で新たな決断をしました。公演中止が相次いだ日本武道館で、観客を入れて行うライブに臨みます。

風:自分で発信するっていうことはいつまでも大事なことであり続ける思うんですけど、なんかそれを、そのやり方とか、あとは自分の音楽活動のスタイル、音楽のスタイルもですけど、あの、いろんなことしていきたいし、あの、常に進化していきたいなと思ってます。

ナレ:換気休憩など、考えられる限りの対策を取っての注目されるライブ。それは、新たな時代の先陣を切る希望の一歩になります。

中西健夫会長(コンサートプロモーターズ協会):やってもやらなくても非難は浴びると思うんですよ、それぞれの立場の方で。ただ「日本武道館でできるんだ」ということを言うと、ライブに従事している方に先が見えるような最初のスタートラインに立てると思います。

ナレ:来月、収束へ向かうのか、また拡大してしまうのか、わかりません。

風:このタイミングも、全部ギフトじゃと思っていますし、とんでもないときにデビューしてしもうたなという感じはあるんじゃけども、悲しかったり苦しかったりすることはあんまりなくて、こんな時期だからこそ、世の中にこの作品が届けられたんじゃろうなと思うし、みんなどうしてええかわからんで、困っとる人はいっぱいおると思うけど、そんなときだからこそ、互いに思いやることを諦めんでほしいって思うし。

ナレ:YouTubeで一人ひとりに届けてきた優しさは、今、多くの人に力を与えようとしています。

(「帰ろう」弾き語り)