才能に惚れたはずが、その全てに惚れていた

初めまして。

「全人類!!この才能に気付いて!!」と言いたくなる才能に出会ってしまったので、人生初のブログを書いてみることにしました。

 

その才能の名は、藤井風。

このブログでは私が感じた藤井風さんの魅力、そしてファーストアルバムの素晴らしさについて書いていきたいと思っています。

 

(実際に書いてみたら簡潔にまとめる能力がなさすぎて22000字を超える謎に長いブログが出来上がってしまったので、お時間のある方のみお付き合いくださいませ。)

 

はじめに

藤井風さんをご存知ですか?

藤井風(ふじいかぜ・本名)。デビューして半年のシンガーソングライターです。

 

まずはこちらのアー写をご覧ください。

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この貫禄で1997年生まれの現在23歳。身長は181cm。

岡山で生まれ育ち、母国語は岡山弁。一人称は「わし」。

茶店を営む両親の元で4人兄姉の末っ子として生まれ、4人兄姉はそれぞれ「空・海・陸・風」というなんともハイセンスな名前をお持ちです。

 

全ての始まりは2010年、彼がまだ12歳の頃、ピアノカバー動画をYouTubeにアップしたこと。高校時代の数年間、動画の更新は途絶えますが、高校卒業後再び更新されることに。

2010年から2017年までは弾き語りではなくピアノカバーをしていた藤井風さんですが、2017年以降歌声が解禁され、弾き語りのカバーもするようになります。

次第にカバー動画が話題を呼び、音楽関係者の目に留まり、今のマネージャーさんと出会ったことによりメジャーの世界へ。

カバー動画で知名度を上げていた藤井風さんはまだオリジナル曲を1曲もリリースしていない段階で夏フェスに出たり、渋谷公会堂のワンマンを即日完売させたりしていたわけですが(凄すぎる)、満を持して、2020年1月24日「何なんw」でメジャーデビュー。現在デビュー半年、という感じです。ざっくりと言ってしまえば。

 

さらに「藤井風とは何ぞや?」という方はとりあえずこちらの公式のプロフィールを読んでみてください。「公式のプロフィールってこんなに色々書いてあるものだっけ…?」と一瞬混乱するくらいには情報量多めでおすすめです。利き腕まで書いてあるの、じわじわくる。

 

3歳頃からお父さんの膝の上に乗せてもらいながらピアノを始め、楽器を弾けないお父さんにピアノやサックスを教えてもらい、絶対音感まで習得。

小学校の終わりにお父さんから言われた「これからはYouTubeの時代」の一言を機に、実家の喫茶店でお父さんが撮ったピアノカバー動画をお兄さんがYouTubeにアップし、これが後に彼の音楽活動のきっかけとなるわけです。

 

この時点で既にエピソードが強すぎてお腹いっぱい。

 

お父さまの先見の明が凄い。

楽器を弾けないのに息子にピアノやサックスや英語を教え、自分の携帯も持ってないのに「これからはYouTubeの時代」と言ってのける。それもYouTubeがこんなに普及する前に。

もしかしたら預言者なのかもしれない。

 

公式サイトのプロフィールの情報量の多さ、最初見たときは「Wikipediaかな???」と思ったのですが、読んでみて納得。これはね、これだけの情報量載せたくなるよね。分かる。だって持ってるエピソードがいちいち強いんだもん。

「これが!うちの風です!これでも文量最小限に抑えました!とりあえずこれだけは知っておいて!」

ってなっちゃうよね。

公式の愛が強くて良い…

 

ここで蛇足なんですが、私と藤井風さんとの出会いについても備忘録として書き記しておきたい…

始まりは2020/5/30、オールナイトニッポン0で藤井風さんに出会ってしまい、その圧倒的な才能に惚れたこと。

それまで各方面で「藤井風」というワードは確かによく目にしていたわけです。その当時の私は「へぇ。新進気鋭のアーティストが出てきたって感じなのね〜」などと思いつつ曲は聴かないまま。そんな時、ふと「藤井風がANN0をやり、歌を歌いまくっていた」という情報をTwitterで見つけました。

「藤井風…最近色んなところでよく聞いてた名前だ。ANNで弾き語りライブもやったのか。2時間喋りオンリーだとハードル高いけど歌多めなら聴きやすいかも。ちょっと聴いてみようかな。」と興味本位でラジオを聴いてみたんです。

 

ちょっと待って…この人100%売れるじゃん…売れるために必要な要素全部持ってるもん…売れる予感しかしないわ…

が率直な感想でした。

圧倒的な才能、曲の凄さ、ほわほわした岡山弁、謎にネイティブな英語、あの何とも形容し難い脱力感。

まるでフィクションかのような強い個性に度肝を抜かれました。

ピアノの技術が何よりも凄かった…即興リクエストで笑点のテーマをジャズ風にしてみたり、クラシックの短調の曲を長調にしてみたり、ケーズデンキのテーマソングを弾いてみたり。

短調の曲を長調にするとか、やってることが高度過ぎて一体何が起きてるのか分からなかったもんね…

弾き語りのときもゆるっと喋りながらバチッとイントロ弾いてるから、喋りと曲のBPMが違いすぎて弾いてる人が別にいるのかと思ったよ…キーボード弾きながら手拍子聞こえてくるのも別の人が手叩いてるのかと思ったよ…全部本人がやってたよ…

「一体どうなってるんだ…?」とその才能に困惑しながら、気付けばradikoのエリアフリーを駆使してANNを聴き続ける1週間を過ごしていました。

そして、ファーストアルバムの初回盤を探し回り、楽曲の考察ブログをネットの海で探し回り、YouTubeの藤井風公式チャンネルを徘徊する日々が始まり、今に至ります。

 

 

なぜ藤井風に惹かれるのか

かなりサクッと藤井風さんについて紹介したところで、私が思う彼の魅力を紹介させてください。

 

1.圧倒的な才能と努力に裏打ちされた確かな実力

まずはなんと言ってもその才能。

とりあえず何も言わずにこれを観てほしいんですよね。YouTubeでの配信ライブです。約49分あるんですけど、その時間、決して無駄にはなりませんので。いきなり49分の動画をおすすめしちゃうあたり、プレゼンが下手すぎるのだけど、やっぱりこれを観てもらうのが手っ取り早い…才能でこちら側を殴り倒してくる…

出来ることならば私が初めて風さんに出会ったANNを聴いてほしいところですが(これまた長尺)、もう聴けないので…

こちらの配信ライブも期間限定のようなのでお早めにどうぞ…!!

 

第1弾はこちら↓(これが49分)

 

第2弾はこちら↓(こちらは30分)

 

この第1弾の6:50あたりが最高なので絶対に観てほしい。

丸の内サディスティックの前奏をバッチバチに弾いたと思ったら急に緩い岡山弁で喋り出して、「丸の内サディスティックには2種類わしあって〜。弾き語りとピアノだけのと。みんながどっちを好きなんかわからんけど、個人的には弾き語りのが好きかな〜ってことで弾き語りの方をさせてもらいまs、\ほぉ〜しゅ〜は〜入社後〜/」って緩い岡山弁から丸の内サディスティックへの急旋回のギャップが素晴らしすぎるやつです。思わず「高低差ありすぎて耳キーンなるわっ!!!」って叫ばずにはいられないやつです。

惚れるからやめてくれ。嘘、もっとやってくれ。

 

このYouTubeの配信ライブは藤井風さんの名刺代わりのような作品だと思っています。注目を浴びるきっかけになったカバーをしたり、即興のリクエストに応えたり、オリジナル曲も弾き語るし、お喋りもあるので人となりも分かる。

 

私はラジオで弾き語りを聴いてたから、弾き語りしてるところを目で見るのは初めてだったんだけど、これを最初に観たときすごくびっくりしたことがあって。風さんは本当にキーボードを見ずに弾く。「ピアノにもブラインドタッチの概念ってあったんだ…」って衝撃を受けました。そしてよくキーボードから手を離す。それなのにノールックで次の音にジャストミートで手が戻ってくる。「手のひらに目でもついてるのか…?」と困惑しました…

 

もう一つ強く感じたのは、本当に楽しそうに弾き語るということ。まるで楽しくお喋りするかのように。この人は「自分の喉から声が出る」と同じくらいの感覚でいつもピアノを弾いているんじゃないかと思いました。

「藤井風とピアノ」の関係性は「人間と楽器」という感じがしなくて、それはもはや身体の一部のようだな、と。まるで鍵盤と一緒に生まれてきたかのような。

 

おまけに絶対音感を身につけていて、楽譜を読みたくないから耳コピで覚えるらしいですよ?

どういうことなの???

「楽譜を読みたくないから」という理由で耳コピで覚えられる才能を身につけたのか(その才能を身につけるより楽譜読む方が絶対楽)、その才能を身につけたから楽譜を読みたくなくなったのか。どっちにしろ才能の次元が違う…ちなみに、本人曰く英語も耳コピでマスターしたらしいですよ…ほんとどういうことなの…

 

ただその一方で、その圧倒的な才能を手にするまでにどれ程の努力があったのだろう?とも考えるのです。

彼はいつも飄々としていてなんでもさらりとこなしているように見えるけれども、その境地には才能だけでも努力だけでも辿り着けなかったはずで。

ANNでは、「親に自分の夢を話しても否定されるだけだから話せない」と悩んでいるメールに対して「親だからって何でもかんでも 話す必要はない。わしだって歌いたいことを誰にも言わずにひとりで練習してた。夢はひとりでも育てられる。」みたいなことを言っていたのがすごく素敵だった。

風さんはきっとすごく恵まれた環境と恵まれた才能を持ち合わせている。幼い頃からピアノを教えてくれたおとんがいて、何より彼自身が類まれなる才能を持っていて。その才能が進むべき道にきちんと導いてくれたおとんも、完璧に才能を開花させた風さんも凄い。その上で、導かれたものだけじゃなくて、自分の意志で道を決めて、自分で切り拓いていった風さんは本当に凄いと思った。

そんなことを考えていたら、YouTubeのドキュメントで風さんが「実はずっと歌う人になりたいと思っとったけど、親はピアニストになると思ってたからバチバチになることもあった。でも初めて親の前で歌ったときに"本気出したら歌えるんじゃのう"って言われた」と言ってて。やっぱりこの道は誰に導かれたものでもなく、彼自身の力で進んできたんだなぁと思うと、あの柔和なオーラの中に誰にも消せない強い熱意が溢れていることに胸が熱くなった。

 

"圧倒的な才能"と"想像できないほどの努力"の両方を持てる"努力し続ける天才"だからこその境地。天才が努力し続けると物凄い大輪の花が開くんですね…この花はきっともっと大きくなりますよ。

 

ピアノの話ばかりしてしまったけど、歌もすごく上手いので、神様の依怙贔屓が過ぎる。

聴き続けていると、ある日突然「歌うっっっまっっっ!!!」って思う瞬間があるわけです。

何気なく聴いてるとそこまで意識が行かないけど、音域も広いし、集中して聴くとすごく細かく技術的なことをやってるんだろうな〜って思う。曲の雰囲気によってブレスの配合を変えたり、歌声のリズムの重心を変えている感じがする。素人なので全然説明できないけど…

あとちょっと洋楽っぽい歌い方するよね?イメージで言うと子音が丸っこい歌い方っていうか。

なんかオシャレに聴こえるのはこういうのも作用してるのかな?

 

ちなみに、彼はサックスまで吹けるんですよ…

才能が渋滞してるから…!この世界の才能のバランス、不均衡すぎない…?

サックス動画はこちらのミスターサマータイムが最高です。選曲が素晴らしい…お兄さんの空さんと一緒に演奏してます。

コメント欄で「サックスもできるんかい!」って総ツッコミされてて笑う。

一番最初にサックス動画をあげたのはこちらとは別動画でおそらく15歳のときなんだけど、15歳の時点でもう完成されてて凄かった。

もちろん一番最初のサックス動画にも「サックスもできるんかい!」ツッコミがされてるわけですけど、あの動画にリアルタイムでツッコミコメントしてた人、その数年後に「いや、歌も上手いんかい!」ってツッコまなきゃいけない未来が待ってると思うと藤井風の才能の大渋滞に目が眩まないか心配。お察しします…

 

2.作品ごとにガラッと変わる顔

最初から不思議だったんだけど、見る度に顔が違う。

藤井風さんの存在をちゃんと認識する前、私は色んな方面で風さんの名前を目にしていて、確か最初に見たのは「HELP EVER HURT NEVER」のジャケ写だったような気がする。その時は「なんかワイルドで顔が強い人だな」って思った記憶がある。

そのジャケ写↓

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で、その後に「何なんw」、「もうええわ」、「優しさ」のMVのサムネイルを見たんだったかな。その時に「あれ?なんかこの人いつも顔違うな?」って思って。

 

 

 

 

さらにその後、ANNを聴く直前に以下のツイートを見てとうとう困惑しました(笑)

 

なんかもう全然顔が違うんですけど。

 

藤井風さんとの本格的なファーストコンタクトが顔の見えないラジオだったこともあって、しばらく「どれが本当の顔だろう?」と思っていました。結果、どれも本当の顔でした。

とても濃いお顔なのにスタイリングでいくらでも顔の印象が変わるのが未だに不思議でしょうがないんですよね…顔が濃い方ってどんな髪型してても顔の存在感が凄いから同じ顔になると思ってたんだけど、必ずしもそういう訳じゃないんですね。

 

私は本来塩顔の方が好きで、濃いお顔には特に惹かれないので風さんのお顔を好きになる予定は全くなかったのですが、風さんの才能に向けたはずの熱狂が才能だけに飽き足らず、気付いたらお顔にも惚れてしまっていた…今となってはお顔を見れば「好き」「可愛い」しか言えず、しまいには「人柄が表れてるあの表情筋が好き」などと言い出す始末…

 

3."天然"と"計算"のバランスが天才

私が思うに、藤井風さんはセルフプロデュースがめちゃくちゃ上手い。

特に"抜け感"が最高なんですよね。

"完璧すぎない"という抜け感こそが逆に完璧で素晴らしいんです。

声を大にして言えないので、文字を大にして書いてみた。

 

例えば、配信ライブではグッズTシャツと高校ジャージというラフな出で立ちで「う〇こ座りですいません」とか言いながらバッチバチに弾き語りする。

「高校ジャージが好きじゃ言う人がおるらしいけんな」って言って高校ジャージを履くあたり、あまりにも"分かってる"感が強くて感心してしまった。そういう要望まで聞いてくれるんですか…

それは、高校ジャージを履いたらみんなが喜ぶことを分かった上で能動的にやったのか、はたまたマネージャー陣から「高校ジャージのウケがいいから」と言われて受動的にやったのか、どっちですか…

一事が万事、風さんは喜ばれることを分かって計算でやっているのか、天然でたまたまやったことが喜ばれてしまうのかが読めない。でも多分、分かってやってる。

真の魔性。

 

そして喋り出したらあの柔和な岡山弁と一人称の「わし」。方言は完全に天然の産物なんですけど、あの岡山弁の親近感って何なんでしょうか。自分が岡山出身じゃなくても何故か親近感が湧いてしまう。あの不思議な魅力。

生まれた土地まで天才とは。

神様は藤井風という存在に沢山の才能を与えすぎて、「ちょっとやり過ぎちゃったかな〜」なんて心配になって、親近感というエッセンスをプラスするために岡山の地に命を運んだのでは?

とまで思った。

しかしその岡山弁も大きな魅力になってしまっているので、結果神様さらにやり過ぎちゃったね。

 

あのセルフプロデュースの上手さはおそらくカバー動画を作る中で育まれていったものですよね。動画を観ているとユーモアに溢れていて、曲に合わせてどう魅せるかを工夫しているのが分かる。

丸の内サディスティックでじゃがりこをタバコ代わりにしたり、矢島美容室や安室ちゃんでウィッグを被ってみたり、曲に合わせた小道具の使い方が巧みだし、雨の曲では濡れてみたり、それぞれの曲に合わせた衣装を着てるのもすごく好き。

"聴かせる"だけじゃなくて視覚にもこだわっているので、画面いっぱいにエンタメが詰まってる。

風さんが「高校卒業後に音楽活動を始めてから観る人のことを意識してパフォーマンスするようになった」というようなことを言っていたけど、動画を観ているとそれがすごく伝わってくる。

時にはハプニングすらそのまま使ったり、ハプニングをTwitterにあげたりするんだけど、あれもすごく好き。

ちなみに、カバー動画の背景のレトロな実家感もすごく良いです。普通に人間として育ったんだなぁって思える。

 

カバー動画の話をしちゃったから私のおすすめを挙げたい…

これ、何がすごいって例によって例の如く、「耳コピ」って書いてあるんですよ…

耳…コピ…?その「耳」というのは私が知ってる、私にも付いてるあの「耳」のことでしょうか?(混乱)

もはや「耳コピ」の概念が分からなくなる。

で、もう一つ混乱するのがフェロモンなんですけど。フェロモンでこちらの度肝を抜いてくる。

不敵な笑みを浮かべながらこちらをチラチラ見るんですよね。それがまた天然なのか計算なのかが分からない。何故なら、中学生の頃からカメラを(というよりカメラで撮ってるお父さんかお兄さんに向かって?)チラチラ見ているから。

あの不敵な笑みが単純に動画を撮ってる家族に向けた笑みだったとしたらめちゃくちゃ恐ろしいんですよ。まぁ、視聴者を意識してあの笑みを浮かべていたとしたらそれはそれでめちゃくちゃ恐ろしいのですが。

で、この動画の一番震えるポイントは、この風さんが未成年だというところです…

未成年…?未成年の定義って何でしたっけ…?(混乱)

お酒もタバコもしてはいけないという、あの未成年?(ちなみに風さんは成人した今でもお酒もタバコもやりません)

つくづく、年齢というものは単なる数字の羅列にしか過ぎないな、と感じさせられます。

 

風さんは12歳の頃からカバー動画をあげていて、有難いことにYouTubeの藤井風公式チャンネルにきちんとまとめられているのでぜひ観てほしいですね。12歳から現在までの成長も追えるので親戚気分を勝手に味わえます(?)

 

あと、動画のコメント欄のクセの強さが面白い。読んでて飽きない。暇さえあればコメント欄読んでる。

というか、藤井風に人生狂わされたい人多すぎじゃない???

その気持ち、分かる。

 

4.とてつもない愛嬌

愛嬌がとてつもなくあるんです。4兄姉の末っ子としてたくさん愛されて育ったからなのか、根っからの末っ子気質ですごく甘え上手…

 

「もうええわ」のBTS(メイキング)で大勢の大人たちに見られながらグリーンバックで撮影することが恥ずかしくて、「やりたくない…こんなに見られて…」って言う場面があるんです。

そのワガママすらめちゃくちゃ可愛い。どんなワガママも聞いてあげたい。

NYや渋谷の街中でのロケは大丈夫なのにスタジオでのグリーンバックは恥ずかしいんですね。可愛い。

 

あと、マネージャーさんに向ける笑顔も最高。風さんを追いかけていると風さんの口から事あるごとに出てくるのが、「ワイルドダンディマネージャー」ことずっずさん。

ずっずさんに向ける笑顔には家族愛のようなものが溢れていて、あの楽しそうな笑顔を見るだけで強固な絆があることがよく分かる。

かつて風さんが「わしのマネージャー世界で一番男前やと思うとるけん」って言ってたので愛が強い。どれだけ素晴らしいスカウトの仕方をしたのでしょうか…?

カメラの向こう側にいるであろうずっずさんへの笑顔がカメラに収められていることによって、映像を観ている私も愛に溢れた笑顔をおこぼれで享受できているので、ずっずさんには足を向けて寝られません。ありがとうございます。

 

ちなみに風さんの運営、新参者ながらすごく好きです。一言で言うならば、ちゃんと血が通っている。

売り出し方を戦略的に練っていそうなので、急上昇→急降下にならないように、息の長いアーティストになるように、きっと色々考えているのでしょう。

なんか、タイアップとかあまり安売りしなさそうな感じするもんな…まだ分からないけど(笑)

ビッグタイアップ来い…!!

あと初テレビが有料放送の30分特番だったのもすごく良いな〜と思った。

やっぱりね、あのキャラをあまり安売りしてほしくはないんですよね。キャラクターがキャッチーで引きが強いから如何様にも転ばせることは容易なんだけど、あのキャラクターを何にも搾取されませんように。私はありのままの風さんをのほほんと見守って、応援していたい。

 

風さんの運営で好きなところがもうひとつあって。いつもTwitterの更新と共にYouTubeのコミュニティが更新されるんだけど、TwitterYouTubeで載せる写真が違うのが本当に素晴らしい。こういう何気ないところに運営の優秀さって表れませんか?

いつもありがとうございます。

グッズも何度も再販してくれたり、「○○円以上買ったらついてくるトート」みたいなのが数量限定じゃなくて、在庫がなくなったら後々そのトートだけ別送してくれるんですよ…良心的すぎ。

 

愛嬌の話に戻しますね(笑)

風さん、たまに上目遣いするんです…あれは多分上目遣い…181cmの高身長で上目遣いできるってどういうスキル…?これは幼少期からおねだりスキルが相当高かったに違いない。

もしあの上目遣い+無邪気な笑顔で「3億くだはい♡」って言われたら勢い余って10億あげちゃう(私が石油王だったら)

ついでに油田もあげちゃう(私が石油王だったら)

 

ちなみに、風さんはたまに「わしは日本語も英語も下手」みたいなことを言うので、「いやいやいや。英語ペラペラに喋ってるし、あんな歌詞を書ける人が日本語下手なわけないじゃん。」と思っていたのですが、お兄さんの空さんが「小生」というワードを使っていたツイートに対して「小生ってなんて読むん こばえ?」ってリプ送ってたのを発見したときは萌え死ぬかと思いました。

 

そんな愛嬌たっぷりの風さんは全然尖っている感じがしない。誰に対しても常に愛を持って接していて、柔和でしなやか。圧倒的陽。

いつもポジティブなことしか言わないし、誰かを傷つけるような言葉は口にしない。

その上でちゃんとこだわるべきところへのこだわりは持ってるからプロフェッショナルなんだよね。

風さんと一緒にお仕事した方がその人柄や姿勢を絶賛しているのを何度も見た。こういうのを見ると、自分の直感は間違ってなかったな、と思える。

 

何故あんなにも尖っていなくて、優しく丸っこいオーラが出てるのかなって考えたときに気付くのは、彼はいつも飾っていなくてありのままだということ。

でも、それは見方を変えれば「"自然体"の演出が上手い」とも言える。

かつて風さんが「モテたいなら、モテようとするな!」と言っていたことがあるんだけど、飾らない姿こそが真のかっこよさだということをもう分かっているんだろうな。

 

その一方で、インタビューとかで「"意図的に"飾っていない」というより「飾れていない」瞬間があるのがすごく良い…

頑張ってよそ行きの喋り方をしてると本当にたどたどしいんだけど、ちょっとほぐれて岡山弁が出始めると自然体になるあの感じ。

ただ、言ってしまえばピアノを弾いて歌い始めた瞬間が一番自然体になる。どんな言語よりもパフォーマンスが一番饒舌。パフォーマンスするために生まれてきたような人だな。

 

 

5.技術と感覚

技術的な才能と感覚的な才能の合わせ技が凄い。

ラジオでやっていた笑点のテーマをジャズ風に変えるとか、クラシックの短調の曲を長調に変えるとか、すごく技術的なことをこちら側に凄いと思わせる暇も与えないほどいとも簡単にやってしまう。

Shape Of Youのカバーの話では「原曲が単調なコードのループだからコード進行を変えてみた。実はこれはm-floのcome againのコード進行と同じなんですよ。」って言ってて、「関ジャムみたい!!面白い!!もっとそういうの聞きたい!!」ってなった。

 

そんなことを思っていたら!なんと!?

8/16(まさかの今日)の関ジャムで藤井風さんの話題やります的な予告が流れていたようで!?

ちょこっと触れるだけかもしれないけど楽しみにしてますよ〜!テレ朝さ〜ん!!!

 

クラシック、歌謡曲、J-POP、何でも弾けて技術は超一級なんだけど、どこか型破りで「センスで生きてきました」感があるのも好き。

膝にキーボード乗せて弾き語ってみたり、床にキーボード置いてう〇こ座りで弾き語ってみたり。書ききれないけどパフォーマンスが多彩。

昭和歌謡的な綺麗で正統派の曲を作ったと思えばデビュー曲のタイトルに草を生やしてみたり。

型を破るためにはまず型を身につけなければならない、というのはおそらくこういうことなんだろうな。温故知新的な。伝統をきちんと学んでいるからこそ新しいものが生み出せるんだと思う。

 

曲作りに関しても技術と感覚の配合が凄いんだろうなぁと勝手に思っている。

彼はやはり生粋のピアノマンなので、まずメロディーから作るんだけど、曲のフックになるフレーズはメロディーと歌詞が一緒に出てくることが多いらしい。

その上で歌詞を作るんだけど、「どうやって歌詞を作っているのか?」に対する答えが「歌詞はメロディーに呼ばれる言葉を探せ」だったんですよ。ラジオで。

もう一回言っていい?

歌詞はメロディーに呼ばれる言葉を探せ

ですよ。このフレーズがもう天才。めちゃくちゃ感覚の話じゃん。

そうは言いつつも、作詞する上で彼が心がけているのは、言葉がメロディーの邪魔をしないこと、かつ意味がある言葉を乗せること。心に従って、嘘をつかない。飾らない。上手いことを言おうとしない。

どこまでもメロディー至上主義なのに歌詞があまりにも素晴らしいんですよねぇ…

生きてきた人生の厚みが違う。

 

 

1stアルバム「HELP EVER HURT NEVER」の素晴らしさを知ってほしい

ここまで散々藤井風さんの魅力について私なりに書いてきたわけですが、私が藤井風さんにハマったのは何よりもまず1stアルバム「HELP EVER HURT NEVER」(以下HEHN)が素晴らしかったからです。これは名盤。

「もっと早く知っていれば…」とは簡単に口にできない。このアルバムがなければ私は藤井風さんにハマっていなかったのかもしれないので。このタイミングで藤井風という存在を知ったことは私にとって最良のタイミングだったんだと思う。

 

もし、HEHNのキャッチコピーを勝手につけてもいいのならば、私は「昭和から令和まで」とつけます(笑)

「風よ」は昭和の歌謡曲のような美しさだし、「死ぬのがいいわ」は歌詞が昭和の演歌の世界。

その一方で「何なんw」は方言で書かれた歌詞なのにサウンドの効果で都会的で令和な匂いがするし、「もうええわ」は特にMVを観てると2020感が凄い。

ちなみに「HELP EVER HURT NEVER」は和訳すると「常に助け、決して傷つけない」なのですが、彼の生き方そのものという感じ。プライベートレーベル(?)の名前もHEHN RECORDSなのでそういうことですね?

 

ここでまず、HEHNの収録内容をご覧ください。

  1. 何なんw
  2. もうええわ
  3. 優しさ
  4. キリがないから
  5. 罪の香り
  6. 調子のっちゃって
  7. 特にない
  8. 死ぬのがいいわ
  9. 風よ
  10. さよならべいべ
  11. 帰ろう

 

タイトルの並びだけ見ると出オチ感が凄い。

でも!!!ここで「あーはいはい。奇を衒ったやつね」とUターンしないでほしいんです。

聴いてみると「温泉でも出るんか!?」というくらいの奥深さなので…!

曲順がリリース順なのも何だか新鮮で面白い。

そしてこれはCDを買った人だけが楽しめるところなんだけど、歌詞カードがとても良い。左頁に歌詞が載ってて、右頁に英語詞が併記してある。この英語詞も風さんが書いたものだから、言い回しの違う部分があると歌詞の解釈が広がるような気がしてすごく楽しい。

 

何よりびっくりしたのが、アルバム曲の音源まで全曲YouTubeの公式チャンネルにあがっているということ。

アルバム曲って普通アルバムを買った人しか聴けないものじゃない?サービス精神旺盛過ぎない…?

これは無料で全曲聴けようともCDを買う人がいるという、作品への自信がないとできないことでしょ。

それからCDを買った人しか手にできない付加価値をちゃんと作ってあるからこそできることでもある。先述の歌詞カード️もそう。

更に言えばカバーアルバム。初回盤には「HELP EVER HURT COVER」と題した全11曲のピアノカバーアルバムがついてくる。通常盤より1000円多く払うだけでアルバムがもう1枚ついてくるという不思議。しかもこのカバーアルバム、それぞれのピアノアレンジが好き過ぎる。特に1曲目のClose To You(カーペンターズ)はイントロをあえて削っているが故に歌い出しが「Why do birds」のウィスパーで始まるという恐ろしい色気の凶器が待ち構えているので一番最初に聴くときは本当に気をつけてください。

初回盤にはブックレットなるものもついてくるわけですが、これまた凄い。もはや写真集。モードでめちゃくちゃオシャレな写真集。きちんとビジュアルの良さも売りにしていくつもりがあるようで、こちらとしては有難いことです。

 

で、ここからHEHNに収録されている曲について書きたいと思っているのですが、HEHNリリース前にYouTubeでアルバム試聴会をやったときに、風さんがセルフライナーノーツを読み上げたんですよね。これがまたすごく良くて。そのときのセルフライナーノーツをまとめてくださっているブログがあるのでぜひこちらを読んでみてほしいです。

 

以下、サウンドの素晴らしさについて語れる専門知識は持ち合わせていないので、各曲の好きな歌詞を引用しつつ、あーだこーだ言っていきたいと思います。

お時間のある方はお付き合いくださいませ。

 

1.何なんw

ファーストコンタクトがラジオだった私はなかなかMVまで辿り着かず、まず配信ライブのパーマ、丸眼鏡、高校ジャージでゆるゆるな風さんから観たわけです。その後、何なんwのMVを初めてフルで観た私の感想は

待って…!?アホほどかっこよくない!?モデルか…!?

でした(偏差値0)。

 

このMV、初のMVにして撮影場所がNYというスケールの大きさ。初MVが海外ロケって、予算のつき方が明らかに大型新人。

そしてめちゃくちゃオシャレ。初MVにしてめちゃくちゃオシャレ。初MVって低予算のセットで作って、10年後とかに振り返ったときに一種の黒歴史として扱われてしまうものじゃないの?(とんだ偏見)こんなん10年後に観たってオシャレじゃんか…

 

楽曲としてはかなりクセ強めなので、もし一度聴いて意味が分からなかったら、こちらの解説動画を観てみてください。楽曲の解説動画まであるという親切さ。

ところでそのオシャレすぎる空間は一体どこなの…?

 

あんたのその歯にはさがった青さ粉に

ふれるべきか否かで少し悩んでる

口にしない方がいい真実もあるから

これが歌い出し。もう全然何を言っているのか分からないんだけど、「何なんw」には"泥臭さ"と"洗練さ"が融合されていると思う。

「青さ粉」に始まり、サビ前で「肥溜め」が出てきて、方言丸出しにもかかわらずオシャレ。何故ならサウンドがめちゃくちゃオシャレだから。

歌詞だけ見るとすごく変なのに、むしろ聞き馴染みのない言葉の連続だったことでオシャレなサウンドに乗っていると耳馴染み良くさらっと通り抜けていくのが不思議。

泥臭さと洗練さがそれぞれの色を失わずに混ざりあって綺麗なマーブル柄を作り上げている。

 

たまには大胆に攻めたら良い

時には慎重に歩めば良い

真実なんてもんはとっくのとうに

知っていることを知らないだけでしょう

私は風さんの書く対比表現が本当に好き。彼は対比表現の名手だと思っている。

 

あれほど刻んだ後悔も

くり返す毎日の中で かき消されていくのね

まさに人生って大なり小なりこれの繰り返し。「あれは間違っていた」「これは失敗だった」と学んだはずなのに何度でも過ちを繰り返す。

でも人生ってそういうものなんだよねぇ。

 

ちなみに「何なんw」「もうええわ」「優しさ」のMVにはBTS(Behind The Scenes)なるメイキング映像まであります。何たるホスピタリティ…

以下、「何なんw」BTSです。

全編英語で字幕が岡山弁。

これまたオシャレ。もう散々「オシャレ」と言い過ぎてオシャレ疲れしてきた…「オシャレ」以外の語彙を持ち合わせていないのが無念。

このBTSのラスト、彼は物凄い言葉を残していきます。

「This MV is imperfectly perfect.

That is life.」

「このMVは未完全に完全

それって人生みたい」

売れっ子敏腕コピーライターか???

もはや思想の次元が違う…

 

最後にこれだけ言わせて。

BTSのサムネの笑顔がおディーン様にしか見えない

 

2.もうええわ

AメロBメロの心に刻みたい言葉のオンパレードからの、サビで突如現れる「もうええわ」の脱力感という緩急のつけ方。

お笑い番組で「もうええわ!」と聞く度にあのサビが頭の中で流れるようになってしまった。

 

心軽くして これから

自由に歩いて みたいなら

すれ違った人だって過去だって怖くない

みんな 先が見えない夜道を

共に 迷い歩く夜更け時

うつむかないで 怯えないで

閉ざした扉 叩いて

曲の雰囲気としてはどこか哀愁があるから孤独な曲かと思ったのに実は優しい曲。

一見聴いてる人を闇に引き摺り込みそうな雰囲気を醸し出しておいて、実際には闇にいる人を救い出して光に導こうとする先導者のようなところが風さんや風さんの楽曲の魅力。

 

泣くくらいじゃったら笑ったるわ アハハ・・・

これぞ人生哲学。

泣いてる暇があったら笑ってしまおう。

雁字搦めになって泣くくらいなら、すべて手放して笑い飛ばそう。

 

夜が更けて 朝の光が顔を出して

「明けない夜はない」みたいなどこか耳馴染みのあるフレーズをこの人はこんなに綺麗な言葉で表現してしまうのか…と思ったところ。

どこか説教臭く聞こえてしまうフレーズも、ここまでさり気なく言われると驚く程に説教臭くなくなる。好き。

 

こちらも解説動画あります。

「この世において何が大切で何が不必要かに気づくまではわしらはみんな囚人みたいなもん」

藤井風教に入信してしまいそう…

 

ちなみに、「もうええわ」は英語詞と比較するととても面白い。

日本語では「もうええわ」の1フレーズで通しているところを、英語詞では "It's over now." "That's enough." "Alright then." "I'm over it." "I'm fed up." "I've had enough." "No more" "Let it go"

これだけの言葉が使われているのです。

英語の表現の豊富さと、その豊富な意味を「もうええわ」という一つの言葉で表すことの出来る日本語の面白さを両方感じられる。

YouTubeでも英語字幕をつけることが出来るので是非とも。

 

3.優しさ

言わずもがなの良曲。

私の母は、ラジオのパワープッシュで流れていた「優しさ」を聴いたことがきっかけで、本当に偶然、私と同じタイミングで藤井風ファンになりました(なんたる偶然)。

 

これまた解説動画あります。

「これは優しさへのラブソング。優しさは弱さなんかじゃなく、優しさは強さ。」

こんな壮大なことを歌えるあなたこそが最強。

 

温もりに 触れたとき わたしは冷たくて

優しさに 触れたとき わたしは小さくて

ちっぽけで からっぽで 何にも持ってない

優しさに 触れるたび わたしは恥ずかしい

やはり対比表現の名手。

「温もり」の対義語が「冷たさ」であるように、風さんにとって「優しさ」の対義語は「小ささ」なのでしょうか。

 

4.キリがないから

過去と近未来が交錯する不思議なMV。

全く同じ歌詞を2回繰り返す構成になっているのが面白いです。

 

そして解説動画

「過去、そして未来に執着せず今に集中しましょ」

どこまでも執着を捨て去ろうとする藤井風。執着ってキリがないからね。

 

「キリがないから」の好きなエピソードは、ラストの「フッ」っていう笑い声は風さんが意図的に入れたものではなくて、キメ顔で歌ってたのが恥ずかしくなってフッて笑ったのをそのままサウンドプロデューサーのYaffleさんが入れた、という話。

Yaffleさんはこういう偶発的な音をあえて入れることをよくするらしい。

Yaffleさん、ありがとうございます。

 

そしてこちらは「キリがないから」の豆知識。

 

5.罪の香り

イントロのホーン隊の勢いが好き。

ひたすらに欲望を追い出そうと葛藤する曲。

 

声も聞かさないで 出て行って

いったい何が欲しいわけ

一体誰に対して言ってるの?と思ったらエゴや欲望などの自分に取り巻く"罪の香り"に対して言ってた。びっくり。

 

おっと 罪の香り

気付いた時にはまだ早い

ほんの少しだけで それだけで

ふりだしに帰り得るもの

でも藻掻いた分だけ 強くなって

救いは必ず来るもの

一見不穏な曲だけど、罪の"香り"であって完全な"罪"ではないし、まだ間に合う段階であることを歌ってる。実は優しい曲。

ほんの少し油断したら全てを失ってゼロに戻ってしまうけど、藻掻いて強くなれれば救いが待ってる。

 

おっと 罪の香り

抜き足差し足忍び足

サビ頭のこの言葉選びに藤井風が溢れてる。

 

6.調子のっちゃって

自他ともに認めるスルメ曲。例に漏れず、私にとってもスルメ曲。

ジャジーでアダルティーな色気のあるメロディーに、自分を戒める言葉が乗っている不思議。

アーティストとしての自分への戒めの曲なのだと解釈した。

歌い方も、けだるさのあるセクシーな歌い方なのが良い。

 

あなたの言葉は この鼻を伸ばす

私だって 私だって

ついハイになって

着色の言葉 無味無臭の心

行き違って 行き違って

調子のっちゃって

この「着色の言葉 無味無臭の心」の対比も好き。

この歌詞を聴いた瞬間、SNS等で「爆笑」「号泣」のような熱量のある言葉を真顔で書き込む「SNSあるある」的情景が浮かんできた。

体温の見えない言葉に踊らされて大事なものを見失わないようにと自分に言い聞かせているのでしょうか。

 

気付けば

優しかった いつも支えてくれた 信じてた

あの子の顔 探しても見当たらない

調子のっちゃって

調子のっちゃって

調子のっちゃった未来を仮定して、昔から応援してくれていたはずのファンが気付いたらいなくなっていた、みたいな状況を想像したのでしょうか。

昔から応援してる人が「有名になったら遠くに行っちゃう」っていう感情を抱くのは当然だと思うし、有名になったら「なんか変わっちゃったな。昔はこうじゃなかったのに。」ってなることもあるのかな?その中でアーティスト自身も「優しかった いつも支えてくれた 信じてたあの子の顔」を探してるんだと思うと勝手に胸が熱くなるよ…

だってこれって昔から支えてくれているファンへのラブソングじゃんって思っちゃって。

私がそういう解釈しかできない属性の人間だということもあるのかもしれない…

 

ちなみにラストの「調子のっちゃって」の囁きは必聴です。ブレスで殺されかけた。

 

7.特にない

「足るを知る」を歌った曲。

 

見返り

求めるから

いつも傷付いて終わる

特にない

渇きなどない

わたし 満たされてる

手に入らないものを追い求めるから傷付く。

欲望なんてない。求めなければ満たされる。

まるで修行僧のよう。

 

風さんがこれほど執着や欲望などの人間の業について歌っているのは、悟りの境地に達して執着から解放されたからなのでしょうか。それとも執着とずっと戦い続けているからなのでしょうか。はたまた人間という生命体への探究心?

 

8.死ぬのがいいわ

ドンキで千切りキャベツと油揚げを買った帰り道でサビのメロディーとフレーズが降ってきたという曲(なんという曲紹介の仕方)。

 

指切りげんまん ホラでも吹いたら

針でもなんでも 飲ませていただき Monday

It doesn't matter if it's Sunday

めちゃくちゃ雰囲気のあるイントロから始まり、どんなオシャレな曲が始まるのかと思いきや歌い出しがこれである。度肝抜かれた。

 

わたしの最後はあなたがいい

あなたとこのままおサラバするより

死ぬのがいいわ

死ぬのがいいわ

三度の飯よりあんたがいいのよ

あんたとこのままおサラバするよか

死ぬのがいいわ

死ぬのがいいわ

そしてサビがこれである。もはや昭和の演歌の世界が広がっちゃってる。

一体どうやったらドンキで買い物した帰り道にこのフレーズが降りてくるのか。

 

個人的にはここの曲順が好きだったりする。「特にない」で煩悩を消し去ったかと思いきや、「死ぬのがいいわ」で煩悩にまみれてるのが人間っぽくてすごくいい。人間ってそういうものだよなぁって思う。

「何なんw」の「あれほど刻んだ後悔も くり返す毎日の中で かき消されていくのね」に通じるものを感じる。人間も、人生も、そんなもの。

 

9.風よ

これはもはや昭和歌謡。最初から最後まで日本語が美しい。大好きです。

 

暮れる 町の侘しさも

変わる 人の空しさも

全部 乗せて風は行く

流れゆく 雲に乗る

あまりにも日本語が美しくてひれ伏した。

ここでも対比表現の名手。

まずイントロがとても綺麗で「あ、これ好きかも」と思ったんだけど、この歌い出しで「絶対好き」ってなった。

なんと美しい日本語を生み出すのか。

 

祈る どうか導いて

願う どうぞ連れて行って

握る 手は離さないで

胸はって 飛んで行かせて

神様を吹く風に重ね合わせて祈っているんですよ…

藤井風という名前を持つ人が神様を風に見立てた曲を作るという、えも言われぬ面白さ。

 

10.さよならべいべ

風さんのリアルな上京ソング。

イントロなしのバンドサウンドに味が出てて好き。

 

来んと思った 時はすぐに来た

時間てこんな 冷たかったかな

時間を温度で表現するのがすごく良い…

旅立ちの時が来てほしくはないのに、非情にも時間は止まってくれない。

 

さよならがあんたに捧ぐ愛の言葉

わしかてずっと一緒におりたかったわ

別れはみんないつか通る道じゃんか

だから涙は見せずに さよならべいべ

この曲に出てくる「あんた」は家族なのか、恋人(想い人)なのか、故郷(岡山)なのか、それとももっと壮大な何かなのか。

「別れはみんないつか通る道じゃんか」はこの世の全てに当てはめることができる。別れのないものなどない。

 

これはアルバムの中で異色の曲だと思う。

いきなりのバンドサウンドっていうのもあるけど、最も強く感じるのは上京ソングというすごくパーソナルな曲だということ。

何故なら、風さんの楽曲には概念を歌っているものが多いから。曲のテーマを設定する上で実体験から引っ張り出すことはあるんだろうけど、実際に個別具体的なことを歌う訳ではない。

ともすると彼には年齢というものを超越した曲が多いように感じるけど、「さよならべいべ」にはどこか等身大の実体験っぽさがある。

そういうちょっと異質な要素がこのアルバムの中でスパイスとして効いていて、どこか人間離れした視点で言葉が綴られた楽曲たちの中で人間らしさを感じさせてくれる。

 

11.帰ろう

これはもう…名曲です…

この曲が私を藤井風沼へと引き摺りこみました…ANNで初めて「帰ろう」を聴いた時の衝撃は忘れられない。

まるで人生のエンドロールのような曲。

風さんが人生を帰り道に重ね合わせて「死ぬためにどう生きるか」を歌った曲です。

こんな生き方できる自信ないけど私の葬式で流してほしいくらい。

この曲は壮大でマクロな曲なんだけど、ミクロな各個人の感情にも優しく寄り添ってくれるとても素敵な曲です。

 

あなたは夕日に溶けて

わたしは夜明に消えて

もう二度と 交わらないのなら

それが運命だね

はい、対比の天才です。

もはや文学。

イントロで「名曲の匂いがプンプンするな」と思っていたら、この歌い出しで「名曲に違いないやんけ…!」となりました。

あまりに綺麗な表現すぎて、最初は意味まで考える余裕がなかったのですが(何故?)、「夕日に溶けるあなた」=太陽、「夜明に消えるわたし」=月なのだと気付いたとき、鳥肌が立った…だからもう交わらないのですね…

 

あなたは灯ともして

わたしは光もとめて

怖くはない 失うものなどない

最初から何も持ってない

「灯をともすあなた」=太陽、「光をもとめるわたし」=月。

まだ太陽と月のメタファー入れてきますか!?もう素晴らし過ぎて息も絶え絶えなのですが…

この世の全てを持っていそうな風さんに「最初から何も持ってない」なんて歌われたら「風さんが何も持ってないなら私も何も持ってないに決まってる」と思えるので説得力が凄い。この曲を聞き続けていたらミニマリストにもなれそうな勢い(そういうことではない)。

 

憎みあいの果てに何が生まれるの

わたし、わたしが先に 忘れよう

これは凄いフレーズですよ…

「赦す」のではなく

「忘れる」

「忘れる」の方が慈愛に満ちているじゃないですか。嫌なことや許せないことがあったとき、「赦す」というのはその事象を残したまましこりを消化するということ。「忘れる」というのは事象そのものを消し去るということ。「忘れる」という行為の優しさと難しさ。

 

あなたは弱音を吐いて

わたしは未練こぼして

最後くらい 神様でいさせて

だって これじゃ人間だ

2番冒頭で再度飛び出す対比の文学。

ちなみにこの冒頭部分、英語詞では

「You are worried about the future

I am still attached to the past」

となっている訳です。

つまり、「弱音」=「未来への心配」、「未練」=「過去への執着」の対比になっているということ。

もう、その才能が怖い。

 

ください ください ばっかで

何も あげられなかったね

生きてきた 意味なんか 分からないまま

生きてきた意味なんて分からないんですよ…

特に思春期とかは「自分は何のために生まれてきたのか」なんて自分の存在意義を考えてみたりするけど、結局答えなんて分からないし、本当はただ生まれてきて、ただ生きて、ただ終えていくだけ。

そこには意味も答えもない。だからこそ存在意義なんて見つけられなくてもただ生きればいい。

 

ああ 全て与えて帰ろう

ああ 何も持たずに帰ろう

与えられるものこそ 与えられたもの

ありがとう、って胸をはろう

私は「与えられるものこそ 与えられたもの」というフレーズが脳天に直撃しました。

物凄い真理を歌う人だなと。この曲の中で一番衝撃的で、一番好きなフレーズ。

最初から何も持ってないのだから、誰かに与えられたものしか他の人に与えることはできない。多分知らないうちにみんな誰かに何かを与えてる。そうやってみんなで与え合って世界は回ってる。だからきっとみんなに生産性があって、生産性の無い人なんていないんだろうな、なんだかすごく優しい世界だな、と何だかこちらまで慈愛に満ちてしまった。

あの…藤井風教はどこに行けば入信できますか?壺はどこで買えますか…?

冗談です…すみません。

「壺を売る人」と「壺を買う人」という関係性で出会わなかったこの世界に感謝します…

ただ、公式グッズとして、もし壺が出たら絶対に買います(出ない)。

 

去り際の時に 何が持っていけるの

一つ一つ 荷物 手放そう

もしかして、もう終活してますか…?

いや、もう真理…

最初は何も持たずに生まれてきて、色んな人に与えてもらったり与えたりして色んな荷物を増やしながら生きていって、そうやって抱えた沢山の荷物を全て与えて、手放して、何も持たずに終わっていく。最後は何も持っていけないから。

これぞ人生…こんな風に生きたいものです。

 

そして最後の最後、

あぁ 今日からどう生きてこう

で終わるんですよ。

エピローグだと思いながら聴いていると、最後で「実はプロローグだった…?」となるどんでん返しが待っています。

「死ぬためにどう生きるか」を歌う、というのはこういうことだったんですね。完敗。

 

そしてつい先日、この「帰ろう」のMVが9/4に公開されることが発表され、そのティザーが公開されました。

待ってました…ずっと待ってました…!

風さんがこれまでYouTubeでカバーしてきた楽曲のMVを撮っている児玉裕一さんが、風さんの原点とも言える「帰ろう」の監督をするという、この少年漫画展開…

涙で視界が滲んでしまう。

 

これ、ティザーだけでもう名作の予感がします。

長い一本道に多様な年代の人々、そして荷台らしきもの。明らかに人生のメタファー…

これは空っぽの荷台から始まって、少しずつ荷物が増えていって、そして段々荷物を減らしながらラストに向かっていったりするのでしょうか?楽しみにしております…

 

 

最後に

この長い文章をここまで読んでくださった方など、本当にいるのでしょうか…?

そんな稀有な方がもしいるとするならば、最後に、YouTube Artist On The Riseのドキュメントも観ていってください(まだリンク貼るのか)

藤井風の軌跡が9分の映像にぎゅぎゅっと濃縮されてます。最高です。

 

藤井風さんのYouTube公式チャンネルは充実してて素晴らしいので、是非とも色々観てみてください。彼の音楽人生はYouTubeに詰まっているので、YouTubeを押さえれば大体大丈夫です。初心者に優しい。

 

最後なので、今から極論言いますね?

 

神様が依怙贔屓して張り切りすぎちゃった結果生まれてきたのが藤井風さんであって、あの有り余る才能を目にしたとき、人は「めちゃくちゃ好きになる」か「めちゃくちゃ嫌いになる」の二択しか与えられないんじゃないか?とすら思ってしまう訳です。

羨望・熱狂を抱えるか、嫉妬・憎悪を抱えるか。あの凄さを目の当たりにして無関心でいられる人っているのでしょうか。

 

はい、極論言い終わりました。

異論は認めます。世界は広いので。

 

ただ、私は藤井風さんという人を見つけた時に「めちゃくちゃ好きになる」という道に進めたことを嬉しく思います。

そして、同じ時代に生まれたことを感謝します。

 

世界が混沌としたこの2020年に、まさに疾風の如くメジャーシーンに現れた藤井風は、間違いなく神様からのギフトです。

神様、最高のギフトをありがとう。

そして風さん、その最高のギフトを私たちに分け与えてくれてありがとう。

 

何より、22000字超えの無駄に長いこのブログを読んでくださった方、もしいらっしゃるならば、本当にありがとうございます。